本研究は・広島市・福岡県大牟田市・パリ市を調査対象地として、日仏の公的扶助における失業者支援を比較研究する。研究方法は、失業者・求職者および関連機関でのインタビューを行い、失業者生活・求職における支援の効果を明らかにする。 明らかに出来た点は以下の通りである。日仏の公的扶助制度は全く異なり、日本では現在も労働能力ある人への扶助(生活保護)は限定されており、その背母として寛大な扶助は就労へのインセンティブに障害になるという考えが根強いためである。そして何よりも、失業者自身が、家族生活の貧困化が進行していても、社会的地位の喪失・自己疎外や否定に通じると考え、扶助生活を望んでいなかった。扶助が開始されるのは、抜き差しならない疾病状況に陥った時である。この状況は、失業者を求職活動に駆り立てて、生活保護基準よりも低い賃金のワーキング・プアを生じさせていた。 逆にフランスの扶助(失業扶助・参入最低限所得・ひとり親手当)は、雇用喪失者への所得手当として創設されており、失業者のなかで扶助生活は珍しくはない。たしかに、扶助には慢性的失業者・困窮失業者というスティグマはあり、その支給条件は厳格化しているが、少なくない受給者が職業紹介所やソーシャル・ワーカーの提案した仕事を拒否しており(金銭的理由・やりがいのない仕事・短期雇用などの理由)、しかしそれでも現金給付は停止されていなかった。また、雇用を確保し早急に扶助から脱出した者も、少なくない者(2割)が扶助に回帰せざるを得ない状況がある。フランスの扶助は非労働力化も認める、生活保障機能を有し、その結果支援と保護はより長期化している。
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