本研究は、婦人保護施設利用者が減少している今日、婦人保護施設の存在意義を利用者の抱える利用要因から検討を試みる。また、生活の再構築を確かなものとするために、自立後の支援の重要性を検証する。 平成16年には、全都道府県に設置されている婦人相談所に事業概要の送付を依頼し、相談内容や相談者の年齢に関するデータをとった。この作業は研究最終年度(19年)にも行い、その変化を考察する。また、『国民の福祉の動向』1960年-2007年から、婦人保護施設利用者数および年齢別利用者数を集計し、その変化を明らかとした。 調査期間中、夏休みには都内にあるひとつの婦人保護施設に通い、参与観察を通して利用者の変化を観察した。退所者に対してインタビュー調査を行い、自立に際して、その後の状況を聞き取った。「個人情報保護法」などによりケースファイルの閲覧が困難となり、インタビュー調査も5人程度にとどまったため、長期婦人保護施設の施設長から利用者の変化に関してのインタビューを行った。 これらの調査から、婦人相談所における相談内容において、いくつかの県の特色が見られた。また、相談者の年齢も、若い世代の相談が多い県や、高齢者の相談が多い県などの特徴が見られた。これらの要因を究明するには、新たな研究が必要と思われる。 ある時期から、20歳代の利用者が減少し40歳代、50歳代の利用者が急増する。これは高年齢者の増加により若い年齢層の利用者が施設から排除されていると見ることもできる。利用者の減少は、ニーズの減少とイコールではないといえよう。
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