研究概要 |
昨年度は,福祉現場で働くソーシャルワーカーに対して調査を実施し,「権利を意識した場面」を収集した。「情報提供」「「プライバシー保護」「金銭管理」といった具体的な場面を通して,情報の伝達・守秘・開示・情報管理,調整,問題の発見,代行・代弁,意思の尊重,権利意識の醸成,経験する機会の提供,啓発・啓蒙,苦情の申し立て,教育,(自他)・研鑚,業務の点検,スーパービジョン,コンサルテーションなど,多くの権利にかかわるソーシャルワーク機能が抽出された。しかし,一方で,そうした機能がソーシャルワーカーの所属機関のシステムによって制限されていることも示唆された。(2005年6月第4回日本精神保健福士学会にてその一部を発表:於広島) そこで,今年度は機関のシステムの変化がソーシャルワーカーに何をもたらすのかという視点で,病院機能評価に取り組んだ精神科病院のソーシャルワーカーを対象に聞き取り調査を実施した。病院機能評価は患者の権利の尊重を大きく掲げており,閉鎖的で医療を優先する環境の改善にどの程度変化があったのか,ソーシャルワーカーはどのような役割を期待され,機能しているのかということに焦点化して調査を実施した。現在,調査結果を分析中であるが,システムの転換に関してポジティヴに捉え,機能を拡大していく傾向にある場合と,これまでの業務や機能を堅持していく場合があり,同様のシステムを導入しても,それ以前の機関の歴史,文化などの制約を受けていることが明らかとなった。また,そうしたジレンマや個々人の事情などから福祉職の定着が困難であったり,人材の不足から教育体制が十分に組めず,権利擁護機能が十分に発揮されていないといった問題点も現れている。この結果については,2006年6月第5回日本精神保健福祉学会(名古屋)などにおいて,発表予定である。
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