1.史資料の収集・分析 昨年度までに収集した佐久総合病院や旧八千穂村(現佐久穂町)の健康管理活動に関する史資料の読み込みと分析を進めると同時に、活動の総合的検証に必要な史資料を補完収集した。また、沖縄県旧佐敷町(現南城市)の健康づくり活動について、行政文書や実践記録などの一次史資料にあたるとともに、県公文書館や県立図書館所蔵の医療・保健に関する文献を調査し、町の施策や住民の活動の背景・基盤を解明する手がかりを得た。 2.当事者・関係者からの情報収集と実態調査 長野県佐久穂町および沖縄県南城市において、健康管理活動に従事してきた新旧の職員および保健・医療福祉の諸分野で活動に取り組んできた住民の方々に対する聞き取り調査を進めた。活動のさまざまな側面を時間軸にそって検討するために、現在活躍している人だけでなく、それぞれの地域で初期の活動を担つた年配の方へのインタビューを行った。その結果、活動に対する専門職の支援、住民の多彩な動きなどを示す事例を多数掘り起こすことができ、地域保健活動の過程で住民主体の活動が生み出される実践のダイナミズムが浮き彫りになった。 「八千穂村」と「佐敷町」は、長野県と沖縄県という地理的条件がかなり異なる二つの県に存するが、それぞれの健康増進活動には共通点もみられ、それが独自のエンパワーメント・アプローチにつながっていることが興味深い。 3.研究のまとめ 二つの地域で収集した資(史)料と聞き取り調査結果の内容を吟味・比較しながら、住民を主体とした健康づくり活動を可能にした要因を検討し、それらの統合・相対化の中からエンパワーメント・アプローチの具体的な提示を試みた。
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