研究概要 |
本研究は、過疎地域において、人口減少及び地理的条件不利により、従来型の社会サービスや社会福祉サービスの提供を困難にする中で、高齢期の在宅生活継続の社会的条件を探ることを目的に実施した。 そのために、この4年間、島根県江津市桜江町内9集落、津袖野町4集落、大田市温泉津町6集落、浜田市金城町2集落の全世帯調査を実施した。 主な知見は以下の通りである。 1.島根県下においては2004年度の限界集落数は416集落になっている。今回の調査では21集落を調査した。これは、県下全集落数(3,586集落)の0.58%に相当する。 2.限界集落の政策要望は次の3点に集約される。まず、僻地で生活できるだけの年金の保障をおこなうこと。そして、介護保険料や利用料の利用者負担の負担減をおこなうこと。さらに、交通費の負担軽減措置をおこなうことである。 3.集落は住民にとって基本的で最小の生活圏である。従って、生活を維持する上で最低限の社会的サービスが堤供されることが必要である。それは、交通手段の確保や、生活環境基盤の整備、食料品・生活必需品の調達、及び郵便・金融サービス、そして介護サービスの提供が求められている。 4.市町村合併によって周迦集落の生活支援施設が撤退している。生活必需品を購入できるシステムを再構築するとともに、行政だけではなく、地域住民や民間事業者など多様な担い手との連携・協衝を加えた社会サービス提供手法の検討が求められている。 5.高齢化と集落衰退の進行の中で住民の危機意識は高まっている。一部では地域の互助活動や行政と住民活動とのコラボレーション、コミュニティ・ビジネスなども活発に行われている。しかし、こうした動きを広げていくためには、行政によるこれまで以上の財政的、人的なサポートが必要となっている。
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