研究概要 |
本研究では、状況的要因として対人的相互作用における場面と関係性に注目しつつ、時系列性・潜在性を伴う動態的(ダイナミック)なアプローチを基盤とする、パーソナリティ研究法の呈示と、アセスメントツールの開発をめざしている。最終年度は、アプローチの基盤となるパーソナリティ研究の最新の動向についてまとめを行うとともに(堀毛・高橋,2007)、前年までの研究の反省をふまえ、マウス・パラダイム法を用いた新たな検査として、「状況評価」「充実感評価」および「欲求対比効果」を測定するツールを開発した。「状況評価」「充実感評価」検査は、6人の役割人物と12の場面で相互作用することを想定させ、その「快適さ」や「充実感」を、文脈的に測定する検査である。また「欲求対比効果」は、EPPSを基盤に11の欲求を文脈的に対比させる検査であり、いずれもマウスの動きの特徴(移動距離・スピード等)により心的反応の把握を試みている。被験者は男女大学生71名で、これらの検査と同時に、構成概念妥当性を測定する顕在的パーソナリティ指標として、対人的欲求、自己制御(制御焦点等)、自尊感情、楽観性、感情強度、首尾一貫感覚(SOC)、主観的充実感等の認知・感情的変数を測定し、関連を検討した。このうち制御焦点尺度やSOC尺度については、その妥当性について自己呈示やストレス反応との関連という側面から事前に分析を行った。また、これらの検査と同時に、基準関連妥当性を検討する目的で、携帯電話を用いた経験サンプリング法により1日4回、1週間にわたり日常の経験・感情状態を収集した。講義への出席により日常経験の変化が少くなることが懸念されたため、データ収集は2007年1月の冬季休業時に実施した。現在データ分析を進行中であるが、分析が多岐にわたること、とりわけマウス指標の解析に時間を要することにより、現段階で結果の詳細は把握できていない。ただ、一部ではあるが、マウスによる充実感指標と日常のポジティブな気分やその強度との間に正の相関がみられることなどが明らかになっている。成果報告書では、こうした点も含め、マウス指標が、顕在的な指標に比べ日常経験や感情に関し優れた予測性を示す点を中心に考察を行い、検査としての有用性について結論を得る予定である。
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