研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は2つあった。一つは、不本意な社会的アイデンティティ(不本意な集団所属)が偏見や差別意識を助長するメカニズムをメリトクラシーに対する考え方の異なる日本と米国を比較することにより明らかにすること、2つめは、学歴に基づく偏見や差別意識を検討対象とすることにより、わが国特有の学歴競争社会の特質を浮き彫りにすることであった。16年度は、大学を対象集団とする集団脱同一視を測定するための尺度を構成するための予備的研究を行った。その結果、集団脱同一視(集団所属を不本意に思うこと)は、集団同一視の単なる欠如(非同一視)とは異なること、集団脱同一視は集団間序列が明確で固定的である場合に生起しやすいことが示された。また、集団同一視よりも集団脱同一視のほうが、外集団の知覚に強い規定力を持つことが明らかとなった。17年度は、前年度に作成した大学同一視・脱同一視尺度を用いて、日米の大学生を対象に同一視群、非同一視群、脱同一視群に分類し、内集団の劣位が顕現化しアイデンティティへの脅威が増大したときの他校への評価の変化を検討した。その結果、日本の大学生の場合、脱同一視群は下位校の評価を引き下げる傾向を示したのに対し、米国の大学生の脱同一視群は上位校の評価を引き下げる傾向にあることが示された。18年度は上記の日米の大学生の反応傾向の違いが、両国のメリトクラシーや学歴に対する考え方の相違に起因するのかどうかを検証した。すると、日本社会のように学歴主義への容認度が高い場合に、脱同一視は下位校の評価の低減に結びつきやすく、米国社会のように学歴主義への容認度が低いと、脱同一視は上位校の評価の低減に結びつくことが示された。日本のように大学間の序列が明確で学歴(学校歴)の持つステイタス機能への信念が強い社会では、不本意な社会的アイデンティティを生み出しやすく、序列に基づく差別意識が助長されやすいことが伺えた。
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Japanese Psychological Research 49巻2号(掲載内定)
人文研究(大阪市立大学大学院文学研究科紀要) 57巻
ページ: 41-62
Studies in the Humanities (Bulletin of the Graduate School of literature and Human Sciences, Osaka City University) Vol. 57
Progress in Asian Social Psychology Vol. 4
ページ: 85-101
Japanese Psychological Research 49 (2) (in press)