仮説生成的なパラダイムによる、初期的な基礎調査を行った。留学生と対人関係を形成する日本人ホストのソーシャルスキルを、留学生のソーシャルスキルと対比させた構図に位置づけながら整理した。1.大学・大学院の留学生と日本人チューター学生の場合:半構造化面接法を用い、留学生と、留学生と特につき合いのある日本人学生であるチューター学生(大学の支援システムの一環として留学生に割り当てられる補助役)に、つき合い方の工夫や問題への対応方法を尋ね、ソーシャルスキルと考えられる内容を抽出した。KJ法を用いて、認知面と行動面の成分を整理したところ、相手の文化に対する姿勢によってソーシャルスキルの用い方が異なることがわかった。文化的な関心や歩み寄りの姿勢は、ソーシャルスキルの観察や実施に結びつき、相手によってソーシャルスキルの実施や内容が選択されるスイッチングが認められた。2.高校および日本語学校の留学生と日本人ホストファミリーの場合:半構造化面接法を用いて、留学生とホストファミリーをペアにして、ホームステイでの問題の対応方法やつき合い方の工夫を尋ねた。KJ法によって、認知的な対処と行動的な対処の分類を行った。ソーシャルスキル実施のレベルを高低に分け、前者をさらに最初から高かった者と、次第に向上した者に分けた。ホストとゲストのこれら実施度パターンの組み合わせから、ペアごとの特徴を抽出したところ、直接的なコミュニケーションを行ったペアでは相互理解が高まり、関係が進んでいた。以上から、ホストとゲストの組み合わせによって、ソーシャルスキルの実施や向上が影響を受けているといえる。相手文化への姿勢や文化的な取り入れの意欲などの認知的要因が関わり方を規定し、頻繁なコミュニケーションを実際にとることが相互理解をもたらし、対人関係を深化させていく。このことはソーシャルスキル学習の意義を支持するものである。
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