異文化滞在者であるゲストとホストの間に成立する、異文化間対人関係形成の過程、促進要因、パターンなどの基礎研究から、関係性形成能力の学習プログラムのための手がかりを探った。学習セッションを試行し、実践研究を行った。基礎研究の一つは、在日外国人留学生(ゲスト)とその周囲の日本人学生(ホスト)との関わりのパターンの整理である。文化学習の志向性や、ソーシャルスキルのスイッチング(使い分け)が、適応に有利と考えられた。二つ目は、外国に留学した日本人青年とその周囲のホスト国の人々との対人関係の持ち方と、帰国後の再適応のパターンの整理である。滞在先でホストと適応的な対人関係を持つ場合、帰国後にソーシャルスキルの使い分けをしないと、再適応の困難に結びつきやすい。三つ目は、在日外国人留学生と日本人学生の間での、個人-集団主義と高-低コンテクストの文化間距離の測定と、適応との関係の整理である。両者とも高コンテクスト度が高いほど適応的で、平均との近さより、平均を超えて文化的価値のある特性を有することが適応に有利である。四つ目は、在日留学生の日本語でコミュニケーションする意志と日本語使用との関係の整理である。日本語の実用性評価や初期の日本語学習意志よりも、代替言語となる英語の能力の影響が強い。これらから、異文化適応は言語力によって決定されると考えるより、ソーシャルスキルを学習して身につけ、使い分けて実効を積む経験から、対人関係形成を通じて適応が促されていくことが示峻される。ソーシャルスキルを学習する機会として、在日留学生とホストとの混合セッションが行われ、パフォーマンスの向上が測定された。「AUC-GS学習モデル」に基づく、ソーシャルスキル学習を取り入れた異文化間教育の試みである。小グループで参加型のロールプレイ方式の学習を行い、日本人の行動とその背景についての理解が高まった。
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