研究概要 |
場を共有する対面的なコミュニケーション状況における,コミュニケーションパートナーとの意見対立の調整過程を実験的に検討した。昨年度は非対面的場面で実験を実施しており,同様の変数の操作を対面場面で行った。実験参加者のうち有効回答を行ったものは大学生男女76名(男性52名,女性22名)であった。ランダムにペアを構成し,リーフレットおよび回答用紙を授業時に一斉に配布し,パートナーと自己を相対化する視点の導入および合意を獲得するように強く求める実験条件の操作はリーフレットの教示で行い,実験参加者にランダムに割り当てた。また一般的な事柄に対する態度の類似性を互いに認識させるため,態度測定後に回答用紙をペア間で交換して回答を記録しあい,その後,1つの話題に関する意見交換を紙面上で行った。さらに自尊心等の測定も合わせて行った。 合意強化,相対化,一般的態度の類似性を独立変数として,意見交換による意見調整経過後の両者の意見のずれの大きさを従属変数とした分散分析を行ったところ,合意強化の主効果および合意強化と相対化の交互作用が見られ,合意を強化することにより意見調整後の両者の意見のずれは小さくなる一方,合意を強化しない条件において両者を相対化させる視点を導入すると,導入しない場合と比較して意見のずれがかえって大きくなることが明らかになった。また,意見調整後の自己の意見に対する確信度についても同様に分散分析を行ったところ,相対化による主効果が見られ,両者を相対化させない場合に,意見調整後の自己の意見に対する確信度が高いことが明らかになった。さらに自尊心の高さと意見調整後の意見のずれの大きさには有意な正の相関関係が見られ,自尊心が高いほど意見のずれが大きいことが明らかになった。以上から,合意を強化し相互依存関係が強まること及び互いを相対化することは意見調整過程に一定の効果をもつことが示唆された。
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