本年度は、中高年世代を対象とした質問紙調査を行った。調査は2006年2月〜3月にかけて郵送で行い、257名から回答を得た。その中で夫婦から回答が得られたのは99組である。夫の平均年齢は64.3(±6.3)歳、妻の平均年齢は60.2(±5.8)歳であり、夫の6割、妻の一割は定年退職を体験していた。主な結果は、以下の通りである。 (1)自分および配偶者の定年退職の有無による適応状態の差は見られなかった。 (2)夫および妻の家庭維持への関与についてそれぞれ評価を行った結果、夫自身が「関与している」と思っているほど妻は夫の関与を認めていなかった。とくに、食事の支度や後かたづけ、子どもを叱るについてのギャップが大きかった。一方、生活費を得ることについては、夫婦とも夫の方が関与しているとしていたが、その傾向はより夫に強く、夫婦とも配偶者の貢献よりも自身の関与についての評価が高かった。 (3)夫婦での外出については9割近くが「ある」「よくある」と回答し、共通の趣味も7割近くが「ある」と回答していたが、共通の趣味を持った方が良いか否かについては夫の65%、妻の56%が賛成としていた。 (4)どのような理由によって結婚生活を維持しているかについて、宇都宮(2005)による結婚生活コミットメント認知尺度を用いて検討した結果、夫側の理由と妻側の理由は必ずしも一致していなかった。全体的に見ると夫-妻の間に平均点では差は見られなかったが、夫婦ごとに様々なパターンが見られた。 (5)結婚継続の理由として、配偶者の人格的要素よりも便利さやその他の理由が強い場合、結婚満足度は低く孤独感は高い傾向が見られた。 (6)家庭維持への関与に関する夫婦のギャップと、適応指標および結婚継続理由について検討した結果、夫群については何の関連も見られなかったが、妻群ではギャップが大きいほど結婚満足度が低く、結婚継続理由を夫の人格以外に置く傾向が見られた。
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