本年度は、これまでに得られたデータを分析し、以下の3学会において成果の報告を行った。 (1)第49回日本老年社会科学会大会「中高年夫婦における役割分担の認識のずれ」(2007.6.20-22) 104組の夫婦から得られたデータを用いて、家事内容に対する関与の自己評価および夫婦の認識のずれを算出し、結婚満足度および結婚観との関係について検討した。全体の四分の一の妻は夫の家事参加に対して不満を抱いていたが、家事参加に関する夫婦の認識のずれが大きい場合、妻の孤独感は高く、利便性や惰性、体裁によって結婚生活を継続していると感じている傾向が見られた。 (2)日本心理学会第71回大会「中高年夫婦の関係性に関する研究2」(2007.9.18-20) 104組の夫婦の就業状況から、夫婦とも無職あるいは仕事を持つ群と、片方が仕事を持つ群に分けて適応状態を検討した。その結果、前者では妻の抑うつ度が高く、後者では夫の抑うつ度が高い傾向が見られた。夫婦とも家にいる場合は定年後ストレスによって、また共働きの場合は加重負担によって妻のストレスが高いと考えられる。一方、とくに妻のみが働いている場合は夫の抑うつ度が高く、夫が退職状況に適応していない可能性が示唆された。 (3)日本質的心理学会第4回大会「人生曲線に見られる中高年夫婦の結婚生活観」(2007.9.29-30) それぞれに描いた夫婦の人生曲線を比較し、退職を機に曲線が変化している夫婦、それぞれが描く曲線のギャップが大きい夫婦など、人生曲線に葛藤が反映されている夫婦を抽出し、それぞれの曲線と結婚観、配偶者に対する思いなどを検討した。互いのすれ違いを認識している夫婦もあったが、妻の不満足の状態に夫が全く気付いていないと思われる夫婦も見られた。 以上で得られた結果は、いずれも研究開始時の仮説を支持するものであった。今後は、研究のまとめとしての報告書および論文の作成と、対象を変えての更なる調査を行うことを予定している。
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