研究課題
基盤研究(C)
観察者の属性推論については、対応バイアスの存在が指摘されているが、行為者はこの観察者の属性推論のバイアスについて気づいているのかどうかという点の検討が第1の課題であった。これについては、複数の実験を行い、行為者は観察者の対応バイアスを過大視する傾向があることを確認した。対応バイアスの過大視と、透明性の過大視の生起する境界条件を検討した実験では、行為者は行為後に自分の行動に着目した場合に対応バイアスを過大視し、自分の内面に注目した場合には、透明性を過大視する傾向が見いだされた。一方、観察者の側については、些細な手がかりを利用し、行為者の属性を推論しようとしている可能性が示唆された。属性推論のモデルに基づき、行為者の持つハンディキャップの考慮の程度を検討した研究では、行為者による観察者の推論過程に対する推測では、対応バイアスの過大視が生じることから、行為者は観察者が自分のおかれた状況の拘束を十分に考慮しないと予測していると考えられる。しかし、セルフ・ハンディキャッピングのように、行為者が自らハンディキャップを作り出す行為をする場合には、そのハンディキャップが考慮されると予測するからこそ、そのような行為をすると考えられる。そこで、実際に行為(遂行)をする前と後で行為者による観察者の推論過程に対する推測を測定し、遂行以前であれば、遂行結果がないために、ハンディキャップが顕現性が高いために、観察者によって十分に考慮されると予測するのかどうかという問題を検討した。さらに、属性の推論を選好の推論までに範囲を拡大し、相互作用場面での透明性の過大視に与えるイセンティブの効果の検討および、親密な他者の間での透明性の過大視について検討を行った。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (2件)
実験社会心理学研究 46・1
ページ: 63-77
The Japanese Journal of Experimental Social Psychology vol.46, No.1.