本研究の目的は、学級経営に関する教師-児童の相互的コミュニケーションを活性化させ、児童の視点から教師へ発せられた主体的意思伝達行動を教師の学級経営に効果的に活用するための実践的研究を行うことである。このため、平成16年度は今教師に求められる学級経営方略を明らかにするために、従来の研究成果についての資料収集を行う一方、小学校教諭と中学校教諭に対して日頃の学級づくりで意識し実践していること、必要だと考えていること、担任した学級についての印象深いエピソードなどを中心に自由面接方式で聞き取り調査を行った。その結果、従来指摘されてきた要因に加えて、多様な児童・生徒の理解のために求められる専門的知識の必要性や学校組織内の人的資源のつながりと活用に関する要因など、昨今の学校を取り巻く環境の変化に深く関わると考えられる要因が抽出された。そこで、平成17年度は、まず先に得られた知見をもとに教師の学級経営方略に関する質問紙を作成した。次に、この質問紙を用いて、小学校、中学校、高等学校の教諭に対して調査を実施し、学級経営力の新しい類型を明らかにした。さらに、小学校と中学校の学級経営の共通点と相違についても検討した。平成18年度は、学級活動時間における教師-児童・生徒の相互的コミュニケーションの実態を把握するために学校現場での参加観察を行い、これらのコミュニケーションを活性化させて教師の学級経営力を高めるプログラムについて検討する。以上の研究を遂行するためには、学級活動記録のためにデジタルHDビデオカメラレコーダー1台等が必要である。また、資料収集と複数の学校を対象とした調査・観察活動、および研究成果発表のための国内旅費が必要である。
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