本年度(平成16年度)の研究目的は、(1)プランニングシステムの検査の開発とその標準化、(2)局部脳損傷者ならびに健常者における神経心理学的検査の妥当性について検討することの2点である。(1)については、Wilsonらが開発した「実行機能障害症候群の行動評価法(以下、BADS)を日本の児童や障害児に適用できるようにするため、BADSの児童版の検討を行った。具体的には、6種類の下位検査(「規則転換カード検査」、「行為組み立て検査」、「鍵探し検査」、「時間判断検査」、「動物園地図検査」、「修正6要素検査」)を、健常学童(9〜10歳:10名、11〜12歳:4名、13〜14歳:15名)、及び健常成人(20〜22歳:8名)に実施した。その結果、BADSは小学3年生以下には適用がむずかしいが、4年生以上では、適用可能であり、年齢による得点の上昇(発達的特徴)が認められた。(2)については、右前頭葉損傷児1名(11歳女児)を対象にわれわれが開発した神経心理学的検査(小林、2000)の妥当性について検討した。検査は、3つの下位検査(「覚醒・注意システムに関する検査」、「同時処理・継次処理システムに関する検査」、「プランニングシステムに関する検査」)から構成されている。その結果、対象児は注意と継次処理に障害が認められたが、プランニングシステムの検査では障害は認められなかった。そこで、プランニングの検査として、新たに、「ハノイの塔検査」、「Self-ordered Pointing Test」、「流暢性検査」、「ギャンブリング検査」の4種類の検査を選んで実施し、健常学童(11〜12歳:19名)と比較検討した。その結果、対象児は「ハノイの塔検査」で障害が認められた。以上の結果から、プランニングシステムの検査としてより適切な検査の選定が今後の課題である。
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