本年度(平成17年度)の研究目的は、(1)幼児用神経心理学的検査の開発とその健常幼児における検討、(2)発達障害児における神経心理学的検査の検討、の2点である。 1.幼児用神経心理学的検査の開発とその健常幼児における検討 Wisconsin Card Sorting Testの幼児版を作成し、健常幼児において検討した。検査は全部で2種類で、それらは2次元カード分類検査と1次元カード分類検査である。2次元カード分類検査は、2枚の見本カード(例えば、赤色のウサギと青色のボート)と4枚の反応カードを用い、色と形によって分類する。最初に、色(あるいは形)から始め、次に形(あるいは色)に移る。その際、分類の次元が変更しても、前の次元から新しい次元にうまく切り換えることができるかどうかを調べる。1次元カード分類検査は4枚の見本カードと4枚の反応カードを用い、色(あるいは形)のみによって分類するもので、2次元カード分類検査よりも次元の切り換えを必要としない点で容易な検査である。これらの2種類の検査を3〜5歳の健常児30名に実施し、各年齢における平均値と標準偏差を求め、それぞれの検査の発達的特徴を検討した。 2.発達障害児における神経心理学的検査の検討 上記の2種類の検査を、生活年齢4〜6歳の自閉的傾向児5名と生活年齢10〜18歳、精神年齢3〜6歳の自閉症児7名に実施した。主な結果は次の通りである。(1)健常児と同じ精神年齢の自閉症児では健常児に比べて成績が低かった。(2)誤りのタイプは前の分類に固執する保続の誤りがほとんどであった。(3)この保続は年齢増加によっても改善しなかった。
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