本年度(平成18年度)においては、以下の2点について検討した。 1.発達障害児における神経心理学的検査の検討 6歳〜11歳の24名の注意欠陥多動性障害(ADHD)児を対象に、行動特徴と神経心理学的検査との関連性を検討した。対象児に対して行動評価、知能検査、神経心理学的検査(注意検査、同時処理検査、継次処理検査、プランニング検査)を行った。24名のADHDのタイプは、多動性+不注意+衝動性:1名、多動性+不注意:8名、衝動性+多動性:2名、衝動性+不注意:1名、不注意:4名、多動性:2名、衝動性:1名、問題なし:5名、であった。これらのタイプと神経心理学的検査との関係について次のような知見が得られた。(1)ADHD児の行動タイプと認知特性との間には、一定の関連性は認められなかった。(2)トークンテスト(同時処理検査)の結果から、多くのADHD児で聴覚的な言語理解と処理が弱いことが示唆された。(3)ストループテスト(注意検査)の結果から、多くのADHD児で注意の切り替えが遅いことが示唆された。(4)プランニング検査ではほとんどのADHD児において問題はなかった。 2.健常者における神経心理学的検査の妥当性の検討 プランニングの検査である「ウィスコンシンカード分類テスト(WCST)」と同時処理検査の「レヴン色彩漸進的マトリックステスト(RCPM)」について、健常成人を対象に、近赤外線トポグラフィー(NIRS)を用いてこれらの検査の遂行時における前頭部及び頭頂後頭部の脳血流動態の様子を検討した。WCSTでは、ブロードマン(Brodmann)の9、10、11、12、45、46の領野あたりに酸化ヘモグロビン(oxy-Hb)の増加を認めた。一方、RCPMでは、特に活性部位は認められなかった。
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