研究概要 |
昨年度の予備調査をもとに作成された被援助志向性尺度を関東地方の中学生982名を対象に検討した。被援助志向性尺度は因子分析され,予備調査と同様,<援助の肯定的側面>,<相談スキル>,<遠慮の少なさ>,<相談に対する懸念・抵抗感の低さ>,<自己開示の恐れの無さ>の5因子が抽出された。永井・新井(2005)を参考に作成された相談行動尺度と被援助志向性の関連については,遠慮と相談行動は予測と反対の結果となったが,<援助の肯定的側面>,<相談に対する懸念・抵抗感の低さ>については,正の相関が認められた。また自尊感情と被援助志向性尺度の相関係数は低い値でありNadler(1998)とは異なる結果となった。接触仮説(Fischer & Farina,1995)を検証するために,SCの認知,会話経験,相談経験との関連が検討された。その結果,(1)SCの認知に関しては,<援助の肯定的側面>,<遠慮の少なさ>,<相談に対する懸念・抵抗感の低さ>,<自己開示の恐れの無さ>でSC認知群の生徒の得点が高かった。更に,SCとの会話経験の有無では<相談に対する懸念・抵抗感>,<自己開示の恐れの無さ>で会話経験のある生徒の得点が会話経験のない生徒より肯定的であった。また,相談経験においても,<相談に対する懸念・抵抗感>,<自己開示の恐れの無さ>で相談経験のある生徒は相談経験のない生徒よりSCに対して肯定的な意見を持っていることが明らかになった。本調査の結果においてもSCとの接触経験は相談に対する態度や意識を好転させるという接触仮説(Fischer & Farina,1995)を支持し,Timlin-Scalera et al.,(2003)の質的研究による結果も支持した。この結果をもとに中学生のSCの援助に対する意識・態度に応じた援助サービスのあり方が検討された。
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