平成9年度に養護学校小学部に在籍する児童に新版K式発達検査を実施した結果、発達年齢が21歳であった児童9名について、その課題の取り組みのプロセスを分析すると、自己-他者領域分化群と自己-他者領域未分化群に分類された。それ以降、それらの児童を対象に自他の分化過程について縦断的研究を行ってきており、今年度はその7年目の実施を行った。自他の分化レベルを把握する課題として、a.積木構成課題(モデルの積木に自分の積木をくっつけて構成しようとするか)、b.描画模写課題(モデルの描画に描線を接近させて、あるいはなぞって描こうとするか)、c.対比的認識課題(選択肢の中から主体的な自我を発揮して1つを選びとることができるか)、d.人物完成課題(提示された図に自分なりの意味を付与しイメージを統合することができるか)を行った。それとあわせて、クラス担任との発達検討会をもち、各事例についての生活場面における対人関係面におけるエピソードを収集した。 課題に対する取り組み結果として、観察期間中持続して行為の主体として自他が未分化なレベルにある者、自他が未分化なレベルから分化したレベルへ移行した者、さらには自己や他者の意図への気づきのレベルへ移行した者がみられた。一方、課題に対しては観察期間中持続して行為の主体としての自他が未分化なレベルにある者であっても、他者の言語的指示を受け止める行為がみられるようになるなど、生活年齢、生活経験による効果と予測される自他関係の持ち方の事例が観察された。
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