平成9年度に養護学校小学部に在籍する児童で、新版K式発達検査を実施した結果、発達年齢が2歳であった9名の児童について、自他の分化過程に着目し縦断的検討を行ってきているが、今年度はその8年目にあたる。9名の内、すでに高等部を卒業した者3名、転居した者が1名おり、中学部、高等部に在籍している5名に対して、新版K式発達検査を実施し、そのうち特に、a.積木構成課題(モデルの積木に自分の積木をくっつけて構成しようとするか)、b.描画模写課題(モデルの描画に描線を接近させて、あるいはなぞって描こうとするか)、c.対比的認識課題(選択肢の中から主体的な自我を発揮して1つを選びとることができるか)、d.人物完成課題(提示された図に自分なりの意味を付与しイメージを統合することができるか)、e.言語性課題(主体・客体を理解し、言語での問いに対して言語でこたえることができるか)の各課題に注目し、自他の分化レベルを把握する視点から分析を行い、縦断的変化をみた。また、自己認識、他者認識に関するインタビュー、クラス担任からの聞き取りを行い、課題結果との関連をみた。 成果として、特に同じクラスに在籍二して高等部を卒業した2名(小学部段階で自他の領域分化群と把握された1名と未分化群と把握された1名)について、9年間の自他の分化過程についての縦断的変化、それに関連する生活経験や生活年齢の効果について事例報告としてまとめた(寺川志奈子 心の育ちをはぐぐむ支援のあり方-「自分づくり」の視点をふまえて 渡部昭男・寺川志奈子監修『「自分づくり」を支援する学校』明治図書Pp.31-59)。両者は高等部卒業時点まで発達年齢2歳台で、一貫して自他分化群、未分化群として把握されたが、生活年齢の高まりに伴って、また生活経験効果によって自他関係における行動の緩やかな発達的変容が示された。
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