研究課題
基盤研究(C)
本研究では、知的発達障害児が自己認識、他者認識を分化させていくプロセスにおいて、生活年齢がどのように影響するかについて、縦断的に検討した。研究開始時点で養護学校小学部に在籍する、行動レベルにおける自他の分化が生じる時期として着目される発達年齢2歳の児童8名を対象に、中学部、高等部へとすすむ過程を追い、行動レベル、および意識レベルにおける自他の分化を捉えることを試みた。積木構成課題や描画模写課題におけるモデルへの接近の仕方やモデルの取り込み方を分析することにより、行動レベルにおける自他の分化をみると、自他の領域分化群5名、自他の領域未分化群の3名が把握できた。両群のその後の発達的変化をみると、行動レベルにおける自他の領域の分化が、未分化な場合よりもその後の認知発達や言語発達を促進するとは言えなかった。また未分化群は発達に伴い行動レベルでは未分化な行為は見えにくくなったものの、言語レベルでは未分化さがみられ、未分化さはそれぞれの発達段階で質を変えながら現れてくることが示唆された。発達の質的変化の時期をみると、8名中7名が小学部6年の終わりから中学部1年の時期において、また3名が高等部1年頃に発達の質的変化が認められた。いずれの群においても、新しい学部へ進学する期待の高まりや思春期に入り対人関係のあり方が質的に変容したことが、発達の質的変化をもたらす要因となったと考えられ、生活年齢の効果は大きかったと言える。また、全学齢期12年間にわたる縦断的事例検討の結果、発達年齢としては変化がみられなかった時期に、一般化された自他意識については発達的変化を認めることができなかったが、一方、日常生活場面と結びついた自己意識、他者意識については、中学部3年からの多面的な見方の始まり、高等部2年からの現実吟味を伴った、内面的な捉えの始まりといった質的変化を捉えることができ、生活年齢、生活経験の効果が認められた。
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地域学論集(鳥取大学地域学部紀要) 第5巻第1号(印刷中)
Regional Studies (Tottori University Journal of the Facucty of Regional Sciences) Vol. 5, No. 1(in press)