研究概要 |
乳児に対することばかけにおける擬人化・共感的ことばかけと養育者の子育てについての素朴理論の関連性を検討するため,1歳6ヶ月の子どもを持つ養育者に対して本調査を行った,子どもに対することばかけにおける人称接尾辞・幼児語(擬音語擬態語・音節繰り返し)の使用傾向,絵本の読み聞かせ方、子どもへのことばかけについての信念,絵本の読み聞かせについての信念、望ましい子ども像を質問紙によって調査した。ことばかけについての信念において共感的ことばかけを志向することが、絵本の対話的読み聞かせ・受容的読み聞かせをよくすることと関係があり、共感的ことばかけ指向は、動作名での音節繰り返し語の使用傾向とも正の相関があった。また、望ましい子ども像において情緒社会性を重視する養育者は、共感的ことばかけを志向していることが分かった。 幼児における共感的認知については,幼稚園年長組の子どもを対象として,植物と無生物に対する人称接尾辞付与が,生物的属性の付与・生物学的推論・道徳的判断に及ぼす影響を検討した。その結果,生物的属性の付与と生物学的推論では人称接尾辞付与の効果は見られなかった。道徳的判断においては、人称接尾辞群は統制群よりも、判断理由として感覚属性に言及して理由付けをする傾向が見られた。また、人間・植物・無生物に対する道徳的判断の理由は異なり、人間と植物には生物的な理由、人間に対しては感覚属性・感情を理由としてあげることが他の対象よりも多かった。 日本の養育者におけることばかけと素朴理論は、情緒・共感性志向が一貫してあり、また、養育者のことばかけが、子どもの擬人的思考を促進する傾向があることが示唆された。
|