研究概要 |
本年度は,昨年度に引き続き,数の理解や計算の習得過程の解明を進めるとともに,小学校における学習・指導の実態ならびに教師の指導に関する信念を調べた。 習得過程に関しては,昨年度の実験よりも課題数を組織的に増やすとともに,対象者を年長児だけでなく,年中,年少児に拡げ,幼児の足し算における指の利用を詳細に検討した。その結果,それぞれの数を指で表すがそれらを数えることなく答える「fingers」や,指を折ったり声にだしたりして数える「カウンティング」が,年少児では難易度が低い課題で,年長児になるにつれ難易度が高くなる課題で使用されていることが明らかになった。 また,算数教育の指導における指計算(指を利用して計算すること)の効用と問題点を明らかにするために,現職の小学校教師にインタビューと探索的な質問紙調査を実施した。その結果,最近の指導要領には,指の利用に関する子どもへの指導については触れられていないが,実際には指を利用している子どもが多いことが明らかになった。また,足し算を教える際の指の利用とその指導については,これまでにも賛否両論があったが,調査からも様々意見がみられた。小学校の1年生から3年生までの間に指を使わないで計算できるようになって欲しいと思う教師が6名中5名おり,その理由として,だんだんできるようになれば自然に使わなくなるという意見や,指にばかり頼っていると計算のスピードが遅くなるという意見がみられた。そして,それぞれの教師が指の利用に対する指導を行っていることが明らかにされた。
|