研究概要 |
本年度は,昨年度に引き続き,計算と身体性との関連を実験的に検討するとともに,計算時における指の利用の長期的な影響を調べるために,大学生,短期大学生,専門学校生を対象に,計算時にいつまで指を利用していたかを尋ね,算数・数学の自己概念との関連を質問紙により検討した。また,年長の子どもをもつ保護者を対象に,指の利用やそれに関する指導について調べた。 計算と身体性との関連ついては,特に手指の巧緻性に着目し,計算能力の関係を明らかにするために,幼稚園の年長児48名を対象に実験を行った。その結果,手指の巧緻性と計算能力との間には有意な相関がみられ,この関係は,動作性の発達得点ならびに短期記憶容量の得点を統制しても,変わることがなかった。以上の結果から,就学前の子ども計算能力には,従来の知見から予想される以上に,手指の巧緻性が関係していることが示唆された。 また,計算時における指の利用期間に関しては,先行研究(杉村・山名,2003)と同様の結果であった。つまり,計算時に指を使っていた割合は,小学2年生までの間に最も高くなり(短期大学生では小2,大学生では小1),その後は徐々に減少するものの,現在も使っている学生が一定数存在した。また,指を利用していた期間が長い群ほど計算や算数の得意な者の割合が低いという知見が得られた。しかしながら,計算時に指を使った覚えがない群に関しては,大学生では,算数や数学が得意な者や好きな者の割合が低かったのに対して,短期大学生や専門学校生では高く全く正反対の結果であり,今後の検討課題となった。
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