1.日本・中国・米国の小学生、中学生、及び高校生を対象とする「希望」についての調査結果の分析検討から、日本における児童生徒の希望の生成が、日本的集団主義に影響されていることが示唆された。すなわち、結果から、(1)米国では、希望⇒相互信頼⇒寛容の枠組みが、(2)中国では、相互信頼(不信)⇒希望⇒調和の枠組みが、それぞれ仮説されるのに対して、(3)日本では、自己信頼=他者に受容されているとの自己信頼⇒希望⇒寛容の枠組みが仮説された。 2.過疎地域における小学生と中学生を対象とする日常生活(遊びや手伝い)と信頼・希望などの調査結果は、遊びや手伝いの有様が、信頼や希望と関連していることを示していた。これは、対人関係史が、希望を規定していることを示唆していると解された。 3.小学校高学年児童を対象とする調査から、希望が自己向上の動機づけを高め、これを介して、彼らの友人関係に肯定的な影響を与えていることが示された。 4.希望概念について、再々考し、北村(1983)を参照して、新しい希望概念に基づく調査項目群を作成して、大学生を対象に調査した。社会的比較と負の相関を持ち、自尊感情と正の相関を持つ「対他的・対自的自己安心感」が、希望に肯定的な貢献をすることが明らかにされた。 5.これらの研究結果は、北京での国際心理学会議、アテネでの国際応用心理学会、ゲントでの国際行動発達学会、日本心理学会、日本教育心理学会など国内外で発表されるとともに、大学の紀要や学会誌投稿されている。来年度においても、日本心理学会で小講演を行なうほか、日本心理学会や日本教育心理学会などで学会発表する予定である。
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