本研究の目的は、中学校から高校にかけて縦断的な質問紙調査を実施し、生徒の進路選択と時間的展望との関連について検討することであった。縦断研究の第4年目にあたる本年度は、以下の2つの調査を実施した。 11〜12月に、2004〜2006年度、公立・私立中学校のべ19校を卒業し、継続して調査への協力を申し出てくれた1.145人を対象に、郵送法による調査を実施した。質問紙は、自己意識、時間的展望、不定愁訴、家庭生活、能力・適性、日本社会、学校生活、卒業後の進路や将来のことについての調査項目から構成されていた。総計で661人から回答済みの調査用紙が送られてきた。 2004〜2006年度の調査と併せると、2004年度コホートは中学3年生、高校1年、2年、3年の4年間分の調査データが集まり、2005年度コホートは中学3年生、高校1年、2年の3年分の調査データが集まった。また、2006年度コホートは中学3年生と高校1年の2年分の調査データが集まった。調査データの収集は当初の計画通りにおこなうことができた。 本年度は最終年度であったので、研究成果報告書を作成し、横断的分析、縦断的分析、学校移行にともなう意識変化の検討、進路選択と進路意識の検討などをおこない、研究協力校に4年間の研究成果をフィードバックした。 主要な結果として中学3年から高校1年にかけて「将来への希望」「計画性」「信頼できる他者の存在」「学校享受感」「勉強理解度」の得点の低下、「空虚感」「将来目標の渇望」の得点の上昇が見られた。中学校から高校への学校移行を経験するなかで、将来目標を持ちたいと思いながらも、授業や勉強に問題をかかえて、将来への希望を弱めたり、空虚感を強く感じる生徒が出てくることが考えられる。
|