研究概要 |
本研究の目的は、中学校から高校へと進学する際の学校移行における生徒の心理的変化の特徴について、4年間にわたる調査データを分析することによって明らかにすることであった。 調査の対象者は、公立中学校16校と私立中学校2校に在籍する中学1〜3年の生徒3,604人、中学校卒業後の調査に参加した高校1〜3年の生徒のべ1,435人、就職・アルバイトの青年のべ10人、総計5,049人だった。2004〜2007年にかけて予備調査1回、本調査1回、縦断的調査3回が実施された。それらの調査を通じて収集されたデータにもとついて分析がおこなわれた。 横断的データから、中学1年から中学2年にかけて、「将来への希望」「将来への志向性」「計画性「自己価値」「信頼できる他者の存在」「勉強理解度」の得点の減少、「空虚感」の得点の増加が見られた。 縦断的データから、2004年コホートでは、高校2年から高校3年にかけての変化が顕著であり、「将来への希望」「将来への志向性」「自己価値」「信頼できる他者の存在」「勉強理解度」の得点が上昇し、「将来目標の渇望」(女子のみ)の得点の低下が見られた。このような時間的展望や自己意識の変化は横断的データと同じ傾向を示していた。 中学3年から高校1年にかけて「将来への希望」「計画性」「信頼できる他者の存在」「学校享受感」「勉強理解度」の得点の低下、「空虚感」「将来目標の渇望」の得点の上昇が見られた。中学校から高校への学校移行を経験するなかで、将来目標を持ちたいと思いながらも、授業や勉強に問題をかかえて、将来への希望を弱めたり、空虚感を強く感じる生徒が出てくることが考えられる。
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