研究概要 |
○小学校1年生から6年生まで633名を対象に、小学生の社会的スキルと対人葛藤場面における行動との関連を検討した。対人葛藤場面は4場面設定された(場面1:貸したものを返してもらえない、場面2:秘密をもらされてしまう、場面3:親しくない人からの誘い、場面4:約束を破られる)。その結果、相手の意図の解釈、自分の行動について、さらに実際にその場面で用いる言葉について学年差があることが明らかになった。相手の意図については、低学年では相手が忘れている、使っているなどの状況を予測したのに対して、高学年になると自分のことが嫌いだからなどといった友達関係に言及していた。また、行動については、中学年では積極的に行動する傾向が高くなるが、高学年では積極派と消極派に分かれたり、複数の選択を提案する割合が高くなった。実際に用いる言葉は、高学年ほど主張的な言葉が増えるものの、場面によって違いが生じることが示唆された。また、社会的スキルが高いと対人葛藤場面における行動は主張的、消極的、婉曲的となり、攻撃的ではなくなることが明らかになった。 ○中学校1-3年生611名を対象に、上記と同様の手続きによって社会的スキルと対人葛藤行動の関係を検討した。その結果、相手の意図の解釈については場面差や性差が見られ、秘密をもらされる場面では悪意を感じている傾向が高いことや、女子の方が意図を複合的に捉えていることが明らかになった。行動についても性差が見られ、女子より男子の方が、親しくない人の誘いを受けていた。具体的に用いる言葉は、男子の方が攻撃的である傾向がみられた。社会的スキルが高いと評価している人は、他者の存在を視点にいれた行動ができることが示唆された。 ○高校生1-3年生、222名を対象に同様の手続きで行った。その結果、学年差はみられず、性差が認められた。行動や実際の言葉については、女子の方が相手の理由や状況を確認していることや、傷つかない配慮がみえたが、男子の方は感情的な行動や表現が認められた。社会的スキルの評価が高い人は中学生と同様に相手から理由を聞き出そうとする努力が認められた。(以上3つの研究結果は、日本教育心理学会第47回総会で発表) ○小学校から高校生まで1,415名を対象に分析し、小学生、中学生、高校生の学年差や性差を検討した。その結果、学年差が顕著にみられた。中学生が対人葛藤場面において、友人の意図を性格や人間関係に帰属する傾向が高いことや、高校生になると、過失や偶然といった対人葛藤に巻き込まれることを回避するような考え方がうかがうことができた。小学生は、中高生に比較すると、どうして友達がそのような行動をとったのか率直に聞く傾向が高くみられた。(本研究結果は、Association for Moral Educationの第31回学会(Harvard University)で発表した)。
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