研究概要 |
非行臨床機関には,警察,児童相談所,家庭裁判所,少年鑑別所,少年院,児童自立支援施設,保護観察所などがあるが,これらにおける精神障害・発達障害をもつ対象者の取り扱い及び処遇に関して,その現状を把握し,児童思春期精神医療機関など関係機関へのニーズ,連携する際の問題点等を明らかにした。特に,少年院仮退院者のアフターケアを担当する保護観察所については,平成17年7月から施行されている「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」の実施機関のひとつであり,精神保健福祉を専門とするスタッフが新たに採用され,本法律が対象とする成人触法精神障害者にとどまることなく,精神障害・発達障害のある非行少年への対応についても大きな変化が期待されることから,その実施態勢についても検討した。 次に,精神障害・発達障害のある非行少年の治療的介入の最終目標となる社会復帰については,その多くは家庭に戻ることから,当該家族に対する地域精神保健を中核とする社会支援が必要不可欠であり,諸外国,特に先進事例研究としてアメリカ・カリフォルニア州及びニューヨーク州における取組みを訪問調査した。これらの調査結果を基に,わが国の法システムや臨床現場の実態に即した家族援助プログラムの作成とその有効性について,保護観察所や本学の臨床心理相談室などにおいて試行した上で実証的に研究した。 それらの研究成果は,研究代表者が大会長となって平成17年7月30・31日に開催した「日本思春期青年期精神医学会第18回大会」などにおいて発表した。さらに,本研究を契機として構築された非行臨床の各機関と児童思春期精神医療との連携システムは,平成19年9月1・2日に開催予定の「日本犯罪心理学会第45回大会」を研究代表が大会委員長となって企画・運営することの礎石となるものである。
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