研究概要 |
本研究は,末期医療におけるがん患者の心理面の援助として回想法に基づいた認知療法の導入と開発を目的としている。平成16年度においては,まず回想法ががん患者への心理面の援助として有効であるかのエビデンスを得るために,緩和ケア病棟の患者に対して回想法を実施した。その結果,QOLの得点は有意に上昇した。QOLのスケールのなかでも,スピリチュアリティや気分に対して効果がみられ,少数の対象者ながらも,回想法が有効であることが明らかになった。 そこで,慢性期のがん患者に対しても回想法を実施し,緩和ケア病棟の患者の結果も加えて内容分析をし,患者が語るテーマを明らかにした。さらにそれを基にして回想法の実施に関するプログラムを作成した。 次に回想法とスピリチュアリティの関係についてセルフエフィカシーの要因を含めて検討した。健康な大学生を対象として,スピリチュアリティ,回想の質(肯定的回想,否定的回想),セルフエフィカシーに関するスケールの得点について分析した。その結果,スピリチュアリティと肯定的回想,スピリチュアリティとセルフエフィカシー,肯定的回想とスピリチュアリティとの間には相互に正の相関がみられ,密接な関係があることが明らかになった。さらに,肯定的回想やセルフエフィカシーに最も強く影響するスピリチュアリティの下位要因を重回帰分析等の統計解析によって明らかにした。 そして,認知療法の効果を測定する道具として,がん患者用のビリーフを測定するスケールを開発するために,患者約100名にビリーフに関するアンケートを実施した。因子分析による解析の結果,7因子が得られた。しかし,各因子の項目数にばらつきがあるなどの問題があるため,さらに改良して,回想法に基づいた認知療法の効果を測定するスケールを開発する予定である。
|