学童期の子どもを養育する母子家庭に家庭教師あるいは話し相手(遊び相手)として大学生を派遣しながら、そのスーパービジョンを行い、母子家庭の子どもたちを追跡するとともに、シングルマザーを対象としたインタビューを継続した。 こうした実践的研究活動の中から、特に学童期の男児を養育する母子家庭について、危機的な状態から、いかに家族システムが再生・回復していくかというプロセスを明らかにしたのが、「母子家庭の家族システムと回復プロセス--学童期の男児を抱える母子家庭を対象として--」(心理臨床学研究第23巻第3号)である。本論文では、子どもが乳幼児期の離婚の場合、離婚による父親喪失よりも母親の育児機能の低下によって危機が生じやすいこと、母子家庭という心理的閉鎖空間における母子のネガティブな感情の悪循環が生じやすいこと、そうした危機状態から、子どもの問題行動の中に意味を見出し、展望を抱き、母子家庭が社会に開かれることによって悪循環が解消していくことという回復プロセスが見出された。また父親が意識的にも無意識的にも母子に影響を与え続けることが考察された。 また、中学生になるまでに親が離婚した青年への回顧法によるインタビューを実施し、その中でも、親の離婚を受け入れ、自分の人生に肯定的に意味づけている青年を取り上げ、「親の離婚を体験した青年の語り」としてまとめた(投稿中)。本論文では、青年たちが、親の離婚に母親救済・両親の不和の解決という積極的な意味を見出していること、また、離婚後の危機を乗り越えるために、「問題の外在化」「親役割の再認識」「自己選択」「マイノリティアイデンティティ」といった方略を用いていることが考察された。
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