学童期の子どもを養育する母子家庭を対象に、家庭教師あるいは話し相手(遊び相手)として大学生を派遣しながら、そのスーパービジョンを行い、母子家庭の子どもたちを追跡するとともに、シングルマザーを対象としたインタビューを継続した。今年度は、そうした母子家庭へのサポートと研究をつなぐ、新しい質的研究方法についてまとめた(堀田2006)。そこでは、新しい質的研究方法として、継続的な半構造化面接の継続による、実践と研究の統合、半構造化面接による親側からの情報と、参与的観察による子ども側の情報の統合を提起し、さらにフィールド・ワークとして生活空間の中で母子家庭にアプローチすることの重要性を訴えた。 また、中学生になるまでに親が離婚した青年への回顧法によるインタビューを実施し、その中でも、しなやかな回復力を持つレジリエントな青年の語りに注目し、その語りから、回復過程における心理的方略についてまとめた(投稿中)。そこでは、回復した青年の語りにおいて、親の離婚に自分の人生にとってのプラスの意味づけを行うことに成功していること、父親不在という危機に対して、別居している父親と会うか、会わないかを自己選択していること、母子家庭に対する社会的偏見に対して、それが「自分のせいではない」という問題の外在化を成し遂げていること、思春期の心理的危機場面において、母子家庭で育っているというマイノリティであることについて、むしろそれを自分のアイデンティティとして確立すること、また、母親の恋愛が中学時代には子どもの危機になるが、しかし母親が親として機能してくれることを再認識することでその危機を乗り越えたということが見出された。
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