研究概要 |
統合失調症患者のための認知リハビリテーションの開発とその効果の実証的検討のために、臨床症伏、神経心理学的機能および認知機能課題施行時の脳機能状態を調べ、認知リハビリテーションによる効果の有無を検討することを目的とした。 平成17年度から引き続き、認知リハビリテーションを行った。対象は説明と同意の得られた統合失調症患者(ICD-10で統合失調症と診断された患者)で、急性期の患者ではなく、比較的、症状が安定している患者とした。事前に、神経心理学的アセスメントを行い、神経心理学的プロフィールを加味して選択した。これまで選ばれた対象患者10名に対して、週1回、1セッションで3ヶ月間、認知リハビリテーションを実施した。この際、維持療法としての薬物療法が併用されていた。認知リハビリテーションは、日常場面におけるスクリプトを用いた社会的知識の組織化の障害の改善を目指した訓練および注意機能の改善を目指した自動車の運転演習課題により構成された。その後、3ヶ月間維持療法としての薬物療法のみでフォローした。認知リハビリテーションによる介入前と介入直後、および維持療法による3ヶ月フォローにおいて、神経心理学的検査と臨床症状評価をおこなった。さらに、近赤外線分光法により、介入前、介入後およびフォロー3ヵ月後の脳機能状態を検討した。結果、社会的認知課題(Script),実行機能,および言語機能の各指標に有意な改善が認められ,さらに、それらの効果はその後の3ヶ月のフォーローアップ時にも維持されていた。付随して,陽性症状評価尺度の一部に有意な軽減が認められ、認知リハビリテーションの効果が示唆された。また、近赤外線分光法による検討では、統合失調症の前頭前野の課題施行中の脳賦活状態に関して、認知リハビリテーション後、とくに記憶課題の検索時にoxyHb濃度の変化が認められる傾向が示唆された。
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