研究課題/領域番号 |
16530447
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡田 康伸 京都大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (90068768)
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研究分担者 |
藤原 勝紀 京都大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (80091388)
皆藤 章 京都大学, 大学院・教育学研究科, 助教授 (70204310)
石原 宏 京都大学, 大学院・教育学研究科, 助手 (40378500)
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キーワード | 高齢者 / 心理療法 / 箱庭療法 / 探索的研究 / 特別養護老人ホーム / 心理臨床学 / 臨床心理学 / 事例研究 |
研究概要 |
本年度は、京都市小川特別養護老人ホーム(杜会福祉法人京都福祉サービス)の協力を得て、箱庭を介した心理療法的かかわりに関する調査を実施した。当初は、20名×1セッションの合計20セッション程度の調査を予定していたが、施設側の事情もあり、6名を対象に、それぞれ複数セッションの調査(H17.3月時点で1〜9回。1ヶ月に1回程度のペースで、総計24セッション)を行った。また、2週に1回の定期的なカンファレンスを開き、調査の各回の振り返りと課題の明確化、課題解決に向けての討論を行い、順次、調査手続きを改善していった。 調査を進めるなかで、箱庭のセッティングに関しては、一般的なセッティングのように玩具棚にミニチュアを並べるのではなく、「机の上の手の届く範囲に広げて」置き、また玩具数も、「通常よりは少な目」にした方が、高齢の対象者にとっては、取り掛かりやすいことが分かった。箱庭の「作品」に関しては、個人差があるものの、非常に豊かな表現が行われることがあることが明らかとなってきている。このことは、加齢による認知機能の低下や、言語的な意思疎通能力の低下にもかかわらず、箱庭という媒体を介して心理療法的かかわりが十分に行える可能性を示唆している。また、「箱庭作品」を作るには至らない場合でも、調査者を相手に、いわゆる「おしゃべり」を楽しむ対象者がおり、こうした「おしゃべり」に傾聴することから、心理療法的かかわりがはじまる場合もあった。こうした場合も、心理療法的かかわりを生む発端に箱庭というセッティングがうまく機能しており、「箱庭を介したかかわり」が想像以上に広く心理療法としての意義を持つと言えそうな結果が得られた。
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