研究課題
基盤研究(C)
異文化適応の過程において、コミュニケーションと感情制御とが重要なファクターである。一般に2地点間の距離は文化交流の阻害要因になりうる。移動先の「異文化性」は距離の関数として増加する。大学生が大学入学を期に居住地を異にする移動をした場合、異文化適応を余儀なくされるが、もしも出身地からの距離が近ければ、「解決すべき問題」の数が少ないだけでなく、出身地に戻る機会が相対的に容易になり、心理的な不適応感の解消もまた容易になる。とすれば、自文化と移動先との間の距離を短くする手段の所有は、異文化適応の過程を容易にするであろう。本研究結果においては、出身地からの距離が、不適応場面と関わりをもつ事象と結びついていることが示された。また、携帯電話やインターネットの普及に伴い、これらの媒体を用いて家族・友人とコミュニケーションを取ることのできる学生は、大学生活に対する不適応感が小さいことがわかった。このことは、異文化適応における心理的問題の少なくない部分が、コミュニケーション(通信と交通)によって解消されることを示している。このような構造は、日本だけでなく、中国と韓国においても当てはまった。もう一つの成果は、いわゆる感情知能と呼ばれる一種の知的能力が、異文化適応の過程において大きな要因となっていることが見いだされたことである。このことは、今後の異文化適応の研究において、さらに感情心理学的側面からの接近が重要であることを示すものでもある。異文化適応の過程は、個人内では感情過程として、また個人間ではコミュニケーションの過程として、「ユビキタス」であると言うことができる。今後は、同一の知見が東アジアだけでなく、他の国々においても同様に得られるかどうかの検討を行うことが必要になるだろう。
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