研究概要 |
われわれが開発した,ロールシャッハ・テストのデータベース(Rorschach Data System;以下,RODSと略)を用いて,今年度は以下に示す研究活動を行ない,成果を発表した。 われわれは,被検者の了解を得たうえで,随時,ロールシャッハ記録をRODSに登録している。現在のところ,RODSには543ケース(うち,健常者308ケース)が蓄積されている。このような活動を通して,RODSは,ロールシャッハ法におけるあらゆる領域の研究に対応できるデータベースとなった。中でも健常者のデータは,将来の標準化研究のための基礎データとして活用できるため,高い価値がある。 このRODSを用いて,筆者はまずテストのスコアリングに関する信頼性・妥当性の検討を行なった。この研究では,同一のプロトコルを,テスト受検者,テスト実施者,そしてテスト場面に同席していない第三者がそれぞれ独立でスコア化した。その結果をRODS等を用いて分析したところ,非生物運動反応,陰影材質反応などでスコアの信頼性・妥当性が低いことが確認された。本研究の成果は,「ロールシャッハ法研究」誌に発表した。 さらに,筆者はロールシャッハ・テスト上に現れた言語表現に関する研究を行なった。この研究では,運動反応の中に示される動詞を独自の視点から分類し,各病理群および健常者群の中でその出現頻度を比較した。その成果は,第18回国際ロールシャッハ学会にて発表予定である(課題名:Relationship between contents of human movement responses in the Rorschach and psychopathology)。 なお,RODSは,2004年7月に東京・金子書房よりコンピュータ・ソフトとして「操作ガイド(研究手引書)」とともに出版され,これまでに数多くのユーザーを獲得している。
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