研究概要 |
われわれが開発したロールシャッハ・テストのデータベース(Rorschach Data System;以下,RODSと略)を用いて,今年度は以下に示す研究活動を行ない,成果を発表した。 筆者はロールシャッハ・テストの人間および動物運動反応の内容に注目した。そこで,RODSに登録された全544ケースの中から健常者,不安障害,統合失調症,および人格障害のケースを中心に463ケースを抽出し,それらの資料の中から人間運動反応(計1,873個)と動物運動反応(計1,487個)のみを取り出した。そしてこれらの反応がどのような言語で構成されているのかを,主として動詞に注目して,外面型・内面型・複合型といった独自の視点から分類を試みた。その結果,健常者群と不安障害群には外面型運動(「踊る」,「跳ぶ」などの目に見える筋肉運動)が,統合失調症群には内面型運動(「愛する」,「悩む」などの精神活動)が,そして人格障害群には複合型(「怒りにまかせて破壊する」,「腕を組んで考える」など,筋肉運動と精神活動の複合)が多く出現することが認められた。この結果から,上記のような視点から運動反応を検討することは,精神病理の査定に役立つことが示唆された。 この研究成果を,第18回国際ロールシャッハ学会(2005年7月,於バルセロナ、スペイン)にて発表したところ,その内容が高く評価され,ポスター賞(poster award)を受賞した(課題名:Relationship between contents of human movement responses in the Rorschach and psychopathology)。
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