学校教育場面で起こる児童生徒の問題行動の中心である対人攻撃行動や対人回避行動に関連する対人認知の特徴やパーソナリティ要因等を把握するために、予備調査をおこなって検討を加え、それを基に本調査を実施した。 予備調査の調査内容は、(1)児童生徒の攻撃性を測定する尺度を改良した(FAS : Fanctional Aggression Scaleの中学生版の検討)(2)ストレスコーピング尺度の作成(3)認知的共感性尺度の採用(4)認知の広がり、等について、昨年度3月に調査を実施し、分析を17年度に行なった。 結果の概要:(1)攻撃性尺度は、中学生においても、従来の因子構造が適応できる(2)コーピングでは、「問題解決」や「サポート希求」が攻撃性の抑制要因となる(3)認知の幅広さは、攻撃性には抑制的に働く。 今年度2月〜3月にかけて本調査を実施している。攻撃性尺度は、FASに、浜口(2005)らの用いた「反応性攻撃」の項目を加えて再構成し、予備調査の内容に加えて、自我特性に深く関連すると考えられる発揚性格・自尊感情・孤独感尺度を追加し、身体的自己概念とライフスタイルや逸脱行動経験も調査している。 また、昨年に引き続き、教育技法の有効性の検討のために、首都圏の公立中学校において、生徒間の相互援助性を伸張させるためのピアサポートプログラムを企画し、特に対人関係スキルの育成を主眼としたグループワークを導入し、計3回実施した。内容は、情報を正しく伝える困難さと葛藤を経験させるもの、グループの目的達成のためにメンバーの発想や感じ方の違いを実感させるもの、日常的に起こる対人的なトラブルの場面を演じて、原因や解決法についてディスカッションさせるものなどである。 さらに10月からは、小学生の多動傾向の児童に対する、適応支援プログラムを特別支援教育に絡めて実践している。別室登校の動傾向の児童に数人の大学生を導入し、プレイセラピーや動作法・ストレスマネジメントの効果を調べている。
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