学校教育場面で起こる児童生徒の対人攻撃行動における対人認知の特徴やそれまでの経験的側面等の関連要因から問題が生起するプロセスを解明し、効果的な介入点を見いだすことを目的とした。 調査内容は、○児童生徒の攻撃性を測定する尺度の短縮版(大渕(1999)のFAS : Functional Aggression Scaleの中学生版を作成)および反応的攻撃性(濱口2004)を改良することによって尺度を作成した。またこれを裏付ける経験的側面として○学校適応行動○対人トラブル○生活習慣を調べ、さらに関連要因として、認知的側面では○認知的共感性(perspective taking)尺度○認知の広がり等を取り上げ、感情的側面として○自尊感情○孤独感を調査した。調査期間は18年2〜4月であった。 結果の概要は以下のとおりである。 (1)中学生におけるキレる行動を説明する上では反応的攻撃性尺度(「怒り」「報復意図」の2因子構造)が有用である。 (2)認知的共感性の「他者視点取得」因子が、特に反応性攻撃性と負に相関しており、認知の幅広さとともに、キレる衝動的行動には抑制的に働くことが示唆された。 (3)自尊感情は、反応的攻撃性のなかでも「怒り」の感情を抑制する効果を持っており、逆に孤独感は「怒り」を増幅する方向に働いている。 (4)反応的攻撃性とネガティブな学校経験や生活習慣の乱れ等との関連も認められ、学校における指導上において、対人スキルのトレーニングや食習慣・睡眠についての介入点も明らかになってきている。 さらに実践研究として、小中学生の多動傾向の児童に対する、適応支援プログラムを特別支援教育に絡めて実践している。別室登校の動傾向の児童生徒に数人の大学生を動員し、プレイセラピーや運動を用いたストレスマネジメントの効果を整理しているところである。
|