虐待や子供を対象とした事件の被害者や目撃者である子供に対して、どのようにインタビューをしていけば、適切な情報を聴取することができるかについて検討を行っている。本年度は、実験的な検討を行った。被験者(実験協力者)は保育園児136名、彼らに、「こぎつねコンチ」という紙芝居を見せた後で、その内容についての質問を行った。質問は、10問であるが、そのうち5問は誘導質問になっている。例えば、「コンチのおとうさんは会社に行っていたよね」という質問が誘導質問の例であるが、実際にはこの物語にはコンチの父親は登場していないので、この質問には答えることが出来ないはずである。しかし、実際には多くの子供たちが「うん」とか「そうだよ」という迎合的な肯定的な回答をしてしまう傾向がある。そこで、インタビューに先立って、一問誘導質問を行い、こどもが誤った解答をしたらそれを修正する1問トレーニング群、四問誘導質問を行い、こどもが誤った解答をしたらそれを修正する4問トレーニング群、そして、インタビューに先立って紙芝居の内容について絵を描かせる描画トレーニング群を設定し、その後に行われる5問の誘導質問にどの程度「ひっかからなくなるか」を検討した。統制群にはこのようなトレーニングを行わなかった。その結果、4問トレーニング群ではもっとも大きな効果があり、引き続いて描画トレーニング群、に効果があった。一問トレーニング群はほとんど効果がなく、統制群と成績は変わらなかった。なお、四歳児と五歳児では、五歳児のほうが誘導的質問に引っかからないという一般的な傾向があった。この結果より、犯罪の被害児童や目撃児童にインタビューを行っていく場合には、事前に4問程度のトレーニングか描画を行うことによって、誘導耐性をつけることが有効ではないかということが考えられた。実際の犯罪捜査場面でのこの方法の使用手法については引き続き検討していく。
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