研究概要 |
従来の比較認知心理学的なカテゴリー研究では、ハトのような動物も自然事物の写真をヒトと同様にカテゴリー化することがよく知られている。多くの自然事物のカテゴリーは、多様な事例がプロトタイプを中心として構造化されているといわれているが、ハトにおいてもヒトと同様のプロトタイプ効果が生じるか、また生じるならばそれはどのようなメカニズムにもとづいているのかを検討した。 本年度の研究では、人の顔写真をMorphingによって合成した画像からなる人工的プロトタイプカテゴリーを用いた。まず、相互に類似していない2名の顔を、それぞれ刺激セット1と刺激セット2のプロトタイプ(M)とした。また、8名の男子大学生の顔を4名ずつランダムに2つのセットに分け、各セットの周辺事例A, B, C, Dとした。さらに、それらの50%合成画AB, BC, CD, AC, AD, BDも加えて、合計10種の周辺事例を用意した。各セットにおいて、Mとそれぞれの周辺事例を様々な割合で合成し、プロトタイプMを中心として10方向に拡散するカテゴリーを形成した。このカテゴリーでは、各事例のM合成率は、その事例の典型性に対応する客観的測度とみなすことができる。こうして作成された2つのカテゴリーにおけるM合成率50%の事例を用いて、go/no-go型のカテゴリー弁別訓練を行った。訓練完成の後、様々な合成率をもつ新奇刺激への般化テストを行ったところ、反応率はPositiveカテゴリーのM合成率の1次関数として変化し、明らかなプロトタイプ効果が生じた。また、M合成率0%の周辺事例にも、有意な弁別の転移が見られた。これらの結果は、ハトにおいてもプロトタイプ効果が生じ、少なくとも従来考えていたような単純な事例学習によっては説明できないことが明らかにされた。
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