研究課題
基盤研究(C)
プロトタイプカテゴリーの獲得過程を明らかにするために、主として以下の実験を行った。実験1:カテゴリー特性を四辺形の色とし、色がついた3つの四辺形からなる刺激を事例とするカテゴリーを構成した。その際、自然カテゴリーにみられる家族的類似性(カテゴリー内である程度の相関をもって生起する特性によって、多様な事例が類似性ネットワークで結びつけられる)と多型性(カテゴリーを定義する必要十分特性は存在しない)を満たすようにカテゴリーを構成した。ヒトはこのようなカテゴリーの獲得が困難で、新しい刺激に対しては学習期に獲得したルールに従って1・0的な反応を示し、プロトタイプ効果は得られなかった。一方、ハトは容易に学習し、顕著なプロトタイプ効果を示した。しかし、プロトタイプはそのカテゴリーで最も頻繁に出現した特性を最も多く含んでいたため、ハトが示したプロトタイプ効果は、これまでの研究と同様に事例学習や特性学習で説明できた。実験2:モーフィングによって画像合成して作成した訓練事例は、カテゴリー内で共通するある特定の顔Mを親として共有していた。つまり、AやBやCやDやそれらの50%合成画のそれぞれとMを合成して各カテゴリーの事例を作成した。このような2つのカテゴリーの弁別訓練の後、Mの合成率が0%から100%までの様々な合成画を用いて般化テストを行った。般化勾配は正カテゴリーのMの合成率に従って増加し、負カテゴリーのMの合成率に従って減少した。この結果は、カテゴリー内で共有される顔特性のカリカチュア効果に類似しており、事例学習モデルや特性学習モデルでは説明できなかった。ハトが示す優れたカテゴリー化は、多くの場合きわめて単純な事例学習や特性学習で説明できるが、カテゴリー構造によっては、カテゴリー内に共通する特性を抽出するような高次認知過程が介在することが示唆された。
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