研究概要 |
キンギョを被験体とした研究では、装置の開発を行った。一つの改良点は、携帯型ポケットコンピュータ(PDA)を利用して刺激材料を提示する方策を採用したことである。デスクトップ型パソコンで刺激(さまざまな傾向・傾角の縞模様)を作成し、PDAに移植することで、コンピュータ処理された図形を提示できるようにした。またこれを可能にするためには、従来用いてきた装置では対応できず、新たな水槽・装置が必要となった。これらの作成も、順調に完了した。これらによって、刺激の位置の設定が刺激の抜き差しをせずに可能となり、将来の動画刺激の実験も可能となった。これらの装置の完成させる一方で、魚類についてはキンギョを被験体とし、従来の装置を用いながら、さまざまな角度の傾きを持つ視覚振動刺激(白黒縞模様)を用いることによって、キンギョの傾き弁別能力を明らかにする研究をさらに進めた。特に、キンギョの斜線弁別を、斜線の傾角(水平に対する角度)は同じでありながら、傾向を逆にする刺激を用いて弁別訓練を行い、傾向情報のみでも斜線弁別が可能であることが明らかとなった。 鳥類を被験体とした研究では、インコ・オウム目に属するセキセイインコの音声コミュニケーション行動を、神経行動学的に解析した。雌のセキセイインコを防音箱の中に入れ、同種の雄のSongを聞かせ、認知的情報処理を行っている脳の部位を検討した。特に前脳に焦点を絞り、最初期発現遺伝子Zenkの産生物であるZENKタンパク質(ZENK)の発現を指標として検討した結果、fields L1 and L3,caudomedial neostriatumに、ZENKの発現が観察された。このことから、同種のSongに特異的に応答するニューロンの存在が、視床-終脳系聴覚伝導路のこれらの部位で明らかとなった。
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