研究課題/領域番号 |
16530470
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
杉岡 幸三 神戸大学, 大学院医学系研究科, 講師 (90112127)
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研究分担者 |
岡市 広成 同志社大学, 文学部, 教授 (40066288)
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キーワード | 注意欠陥多動性障害 / 空間認知障害 / 逆転学習遅延 / メチルアゾキシメタノール / 海馬 / 発生学的形態異常 |
研究概要 |
小児の注意欠陥多動性障害(AD/HD)の成因を探るために、ラット胎生期メチルアゾキシメタノール(MAM)投与によって、海馬の発生学的形態異常を有するAD/HDモデルを作成し、これらの動物が示す行動異常と神経学的所見との相関を求めた。 胎生15日MAM投与動物(MAM-15群)および対照群の離乳期および成体期に、モリス型水迷路事態下で、1)4分割象限の中央に逃避台を置く標準条件と、プールの中央に逃避台を置く中央条件の2条件下で参照記憶を分析したところ、離乳期および成体期とも、MAM-15群は標準条件では空間認知の遅延を示したが、中央条件では群間の差異はなかった。このことは中央条件が空間認知を必要としない課題であることを示唆し、negative control課題となり得る可能性を示した。2)プール内にT字型の衝立を設置し、強制試行と選択試行から成る遅延場所合わせ課題下での作業記憶を分析したところ、離乳期および成体期とも、2分間の遅延時間においてもMAM-15群は試行を通してチャンスレベルに留まり、空間的作業記憶の顕著な障害を示した。また、3)成体期において、4分割象限の中央に逃避台を置く標準条件下で訓練を行なったあとに、逃避台の位置を180度異なる位置に置く逆転空間認知学習課題を与えたところ、MAM-15群はこの学習の獲得の有意な遅延を示した。 MAM-15群で観察された空間認知学習における参照記憶、作業記憶の障害また逆転学習の遅延は、この群の動物で観察された海馬の発生学的形態異常(海馬CA1に特異的な錐体細胞の拡散および異所性の錐体細胞の集塊)と相関していると考えられ、これらのことは、AD/HDが海馬の発生学的形態異常と関連している可能性を示唆するものである。
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