研究概要 |
本年度は昨年度に引き続きラットの時間弁別学習と脳内電気活動の対応を検討した。本研究では,Gibbon, Church,& Meek(1984)のスカラー特性に基づいた時間知覚の情報処理理論にしたがい,時間認知の脳内メカニズムを明らかにすることを考えている。ラットを用いて時間弁別行動中の脳から活動を測定し,時間弁別学習と脳内電気活動の対応を検討することを目的とした。具体的には,Wistar系ラットを被験体として用い,ピーク法のPI30秒を訓練し,時間弁別行動の反応ピークを形成する行動パターンと脳内電気活動の対応を検討した。秒から分単位の時間認知研究は時間に関する心理学研究において重要なものである。短い時間知覚がどのように脳内で処理されているのかを解明することは非常に重要で緊急に求められている課題である。本研究の実験結果から,動物にもヒトと同じように刺激の特性によって心理的時間の感じ方が異なることが実験的に明らかにされてきた。同じ手続きを用いて音刺激を操作し,時間経過に伴うピーク位置を測定した。ピーク位置あたりで頻発するレバー押し行動中のラットから脳波を同時計測した。脳内電気活動の分析では時間計測開始の音刺激提示からピーク出現にいたるまで,さらにピーク経過後の周波数分析の時間的変動も検討した。時間弁別行動パターンの反応出現ピーク付近の脳内電気活動は相対的に他の区間よりもパワが上昇する結果を得た。しかし,個体ごとおよび部位ごとの分析においてデータのばらつきがあり,さらにより多くのデータを収集し詳細に確認する必要性がある。結果の一部は2006年9月にニュージーランドで開催された国際比較心理学会で発表した。このようなデータの結果をふまえて,最終年度となる来年度以降は,まとめの報告書作成と時間知覚の脳内メカニズムについてさらに検討を進めたい。
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