研究概要 |
ストレス負荷時に生じる血圧の上昇は,背景をなす血行力学的反応パターンの面から見ると,2つのタイプに大別される.その1つは,主として心拍出量の増加が血圧の上昇をもたらす場合(心拍出量↑⇒血圧↑)であり,心臓優位反応パターンと呼ばれる.いま1つは,主として全末梢抵抗の増加が血圧の上昇をもたらす場合(全末梢抵抗↑⇒血圧↑)であり,血管優位反応パターンと呼ばれる.これらの反応性パターンの分化は、これまで、Obristによる能動的-受動的対処モデルにより解釈されてきた.本研究では、これに替わる注意-感情モデルを提唱するべく、まず能動的対処時の実験的証拠を集積した. 1.実験1:心臓優位反応パターンを誘発する暗算課題への挑戦時の血圧、心拍出量,及び全末梢抵抗を測定した.また、この際、主課題を妨害するオッドボール刺激を呈示することにより、事象関連脳電位P3を測定した.結果、より血管優位型反応パターンを示す個人ほど妨害刺激に対するP3a反応(定位反応)が増強することが確認された(r^2=.65).これは、同じ能動的対処時でも、注意容量の違いにより個人の反応パターンが異なることを示している. 2.実験2:実験1と同様な課題を、妨害刺激の強度を操作して行った.結果、妨害刺激の強度差は、心臓優位者にのみ影響を与えることが確認された.これは、妨害刺激の強度が上昇することによる感情競合が心臓優位反応に影響することを示しており、心臓優位反応者の対処方略がより感情的方略によるものであることを示唆している. 平成16年度は、事象関連脳電位を主にした注意-感情モデルの間接的実証を試みた.17年度は、感情価を反映する皺眉筋活動を共に観察することで、より直接説的に注意-感情モデルによる反応性パターンの分化の解釈を試みる.
|