研究概要 |
指尖容積脈波は極めて簡単に測定できる上に,ストレスと情動を鋭敏に表す優れた指標として心理生理学では古くから応用されてきた.過年度の助成研究において申請者グループは,指圧迫法を適用して血管弾性を近似する指数関数モデルを構築した.本研究では圧迫法を脱し,より簡便なベクトル分析法および指尖容積脈波ベクトル指数(VI)を提案する.VIはさらにαアドレナリン作動性血管緊張度と血圧のベクトル要素2成分に分解される.そしてこれらを拡張して,容積脈波指標だけで構成される極めて簡便かつ斬新な簡易ストレス反応型評価法を提唱する.16年度には,ベクトル分析法の妥当性を検証し,誤差を評価するための実験を行いストレス負荷時の資料を収集した. 1.一心拍毎のベクトル指数を算出するためのソフトウエアを作成した。 2.実験1:男子大学生40名を被験者として、暗算課題負荷中のベクトル指数、血圧成分、血管緊張度成分の変化を測定した。30秒区間毎に左前腕部を50mmHgで圧迫し,静脈阻止プレチスモグラフィーの手法で右腕前腕血流量を測定し,平均血圧を血流量で除算して前腕血管抵抗(FVR)を求めた.その結果,ストレス課題負荷中の反応型が心臓型から血管型へと推移するのに対応し,ベクトル成分の傾きが予想通りに変動することが確認された. 3.実験2:男女大学生40名を被験者として、スピーチ課題負荷中のベクトル指数、血圧成分、血管緊張度成分の変化を測定した。指血圧測定装置Finometerから算出される心拍出量と総末梢血管抵抗反応性から,心血管反応プロファイルを求めた結果,心臓型となる被験者と血管型になる被験者が区別された.それらの群別にみたベクトル指数の特徴について現在分析中である. 17年度では,16年度に得られた資料を用いて,ベクトル分析の誤差評価を実施し,ベクトル分析の3つの手順間で誤差の比較を行う。
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