研究概要 |
今年度でこの研究費による研究は完成年度になるが,まだデータ整理が完了していないために,報告書については延期願いを提出した。昨年度に続いて解析している内容は,やり残してあった個体差のデータとパルとアユムの2固体についての成長記録を追跡したデータの解析である。前年度までに完成した系統差を目指した研究は,1種1個体という限定があって,一般化するにはやや弱い面があるので,多少時間をかけて個体数を増やすことを考えて,ある程度まで実現している。そのデータの整理に時間がかかっている。もう一つは,2個体に限定されるが,チンパンジーの瞬目について,縦断的な資料を手に入れて,解析を行っている。霊長研にいるこの2固体については詳細な成長記録があり,副次的に瞬目の振る舞いを検討するには好都合であるが,映像データのために解析に時間がかかっている。 結果については,まだ整理が終わっていないために結論とは言えないが,現段階での印象で言えば,以下のようになる。前者,つまり個体差,に関しては,オランウータンとゴリラ・チンパンジーの瞬目の振る舞いは,ヒトの個体差よりもやや小さくなる傾向が伺えた。後者の縦断的研究の結果の一部では,やはりヒトとは相当に違う発達をすることが伺えた。つまり,乳幼児の段階からチンパンジーはかなり高頻度の瞬目をすることが特徴のように見えている。ということは,チンパンジーの成体の瞬目率はヒトのそれよりもやや低頻度であると思われるので,乳幼児段階の瞬目率と成体の瞬目率に余り大きな差がなく,発達曲線らしいものは描けない可能性もある。このことは,しかし,最近手に入れたヒトの乳幼児のデータでも新生児の瞬目は予想外に多いこと,と一致する可能性もある。しかし,なぜそうなるかについての推論は極めて困難である。
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