リスト指示忘却パラダイムでは、第1リストの呈示終了後に、第1リストを忘却するようにという忘却教示を与えた忘却群と、引き続き第2リストを記銘する記銘教示を与える記銘群を設け、いずれもすべてのリストの再生と再認を求める。典型的な結果は、(1)第1リストは記銘群より忘却群の再生成績の方が悪い、(2)第2リストは忘却群よりも(第1リストからの順向干渉を受けた)記銘群の再生成績の方が悪い、(3)再認テストでは第1リスト、第2リストともに両群の間に再認成績の違いが認められない、というものである。本研究では、このパラダイムを用いて、言語材料と画像材料における情動性と二重課題のそれぞれが意識的な検索抑制に及ぼす効果について検討することを目的とした。実験1で、ニュートラル単語16語とネガティブ単語16語を使って、記憶負荷のない状態で検討した結果、(1)と(3)という通常の指示忘却現象が認められた。実験2では、実験1と同じ方法で、記憶負荷を与えた(第2リストの呈示前に全員に6桁の数字を記憶させた)ところ、指示忘却効果の消失を確認することができた。実験3では、画像材料(ネガティブ写真24枚)を用い、記銘群24名と忘却群24名を対象に、記憶負荷を与えない場合のリスト指示忘却の知見を検討した。その結果、ネガティブ画像でも(記憶負荷を与えない)単語材料とまったく同様の(1)と(3)のリスト指示忘却現象が認められた。実験4では、画像材料の記憶負荷の影響を調べたところ、単語とは異なり、指示忘却現象は消失しなかった。これらのことから、言語材料、画像材料のいずれの場合にも検索抑制が認められること、また、これらの検索抑制が成功するためには、抑制したい材料から注意をそらし、別の材料の記銘活動に十分に従事しなければならないことが示唆された。
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