研究概要 |
記憶における隔たり検出仮説の実験的検討を行った。実験1では,まず,色彩情報と形態情報および出来事情報を比較検討するために,物語性のある出来事をスライドにて被験者に提示した。提示後には妨害課題(30分)を挿入し,さらに事後情報質問が行われた(事後の情報では一致情報群と不一致情報群が被験者間計画で用意された)。さらに数分後には二肢選択の強制再認テストが実施された。結果は事後情報を観察する者ではなかった。実験2では実験1と同一の学習材料を提示して,事後情報の提示媒体を二人の女性の学習材料を見た印象をビデオで録画したものを提示した。ここでも一致情報と不一致情報群が用意された。基本的な手続きは事後情報の提示形式が変わった以外,事後情報の内容は変化させていなかった。結果は3つのターゲットのうち,色彩情報でのみ事後情報効果を認めるものであった。実験3では実験2と事後情報の提示フォーマットを変化させて,実験2の事後情報を反訳して紙に印刷したものを提示した。結果は3つのターゲットうち,色彩情報と形態情報とに事後情報効果を認めるものであった。以上の結果から,1)事後情報は従来の質問紙の形式で提示される場合には認められないものの,第3者の印象として提示されると認められるという社会的影響を観察するものであった。2)色彩に関しては,社会的影響を受けやすく,メディアの変化にも関わらず,印刷物でもVTRの画像提示でも認められるという結果であり,隔たり検出は色彩においては困難であることが認められた。 本結果の一部は「法と心理」に原著論文として発表された。また本研究のすべてを含んだものが,Applied Cognitive Psychologyに投稿予定である。
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